2016年06月01日

渋川氏の蕨城址

東京都のJR山の手線の池袋あるいは田端から東北線に乗り換えて、約20分で蕨市につきます。駅の西口から西方へ徒歩約10分で、蕨城址公園にきます。城址の入り口に蕨市教育委員会の説明版がありいわく、
「蕨城は、南北朝時代に渋川氏が舘を構え、大永4年(1524年)に北条氏綱により攻撃され、破壊されたと言われています。江戸時代の初めには、徳川家の鷹狩り用の御殿(休憩地)として城跡が利用されました。江戸時代に記された絵図面によると東西が沼、深田に囲まれた微高地上に、幅約11.8mの囲堀と幅約8.2mの土塁をめぐらし、堀の内側の面積は約12,200uとなっています。
(中略)」また昭和36年(1961年)11月、本丸跡に文学博士諸橋轍次撰書の『蕨城址碑』が建立され、現在は蕨城址公園として整備されています」と。
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(蕨城本丸跡)

「太田道灌状」35段には、次のように記されています。
「渋川左衛門佐殿の御事は、板倉美濃守は最初より道灌に同心の儀をもって、相州所々にて合戦せしめ、御迎に参り、用土原においての御合戦の時も手を摧き、白井へも御共致し、御再興以後小机並びに相州奥三保、下総境根原合戦時も戦功他に異なり候、左衛門殿は白井御留守、相州並びに鎌倉辺りの所々において、ご自身太刀打たれ、御家風中で少々討ち死にし、御粉骨比類なく候処、御名字の地渋川庄今も相違せしむるの段、都鄙に聞え、誠に然るべからず存じ候」《渋川左衛門佐殿の事は、(家老の)板倉美濃守が最初より道灌に同心の行動をとって、相州の所々にて合戦をし、(顕定を河内御座へ)お迎に参り、用土原においての御合戦の時も相手を討ち、白井(城)へもお伴をし、ご再興以後も小机城並びに相州奥三保、下総境根原合戦の時も戦功が他に勝っています、左衛門殿は白井城に留って守り、相州並びに鎌倉あたりの所々において、ご自身太刀を振るって御家中で少々討ち死にし、ご粉骨比類ないところ、御名字の地渋川庄が今も安堵されていない事実が、都鄙に聞え、誠にあってはならないことと思います。》
 
渋川義鏡は、室町時代後期の武将。享徳の乱を鎮めるために室町幕府から関東に派遣された堀越公方足利政知の補佐役として、共に下向しました。関東(武蔵蕨郷、現在の埼玉県蕨市)に分家が存在していた事、渋川氏が足利氏一族でも家格が高い家柄であった事が理由ではないかといわれています。
渋川氏が関東に派遣された長禄元年は、この時代のひとつの節目となる年でした。江戸城と河越城の築城、五十子陣城の構築、堀越公方の関東下向など重要な出来事が目白押しです。
「太田道灌状」の一節「御名字地渋川庄干今令相違之段」の原注に「自山内渋川所領横領」とあるように、渋川氏は山内上杉家に所領を没収され、後に、扇谷上杉家とも対立して失脚しました。渋川氏は、太田道灌の与力として大活躍したことが裏目に出て、上杉氏の不興を呼んだと思われます。
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(蕨城址碑)        
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(「青春」の碑)
群馬県渋川市にあった渋川庄は、平安時代末期にもともと、出自不明の渋川氏が領していたものの、渋川氏が没落して欠所となっていました。その後斯波氏の一族がその地に拠り渋川氏を名のりました。その支族は蕨城に拠り栄えていました。
蕨城址の本丸跡に巨大な「蕨城址碑」があります。碑の裏面に、諸橋轍次撰の長い碑文が刻まれています。いわく「蕨城の歴史は貞治年間武蔵国司渋川義行ここに城居し長禄元年曽孫義鏡関東探題として鎮を定めてより二百余年代々渋川氏の拠るところとなる(後略)」と。

また道灌は「太田道灌状」35段に「相州並びに鎌倉辺りの所々に於いて」と、相州と鎌倉を立て分けて記しています。これが当時の一般的な認識であったとすると、道灌にかかわる「相州」の記述は、鎌倉ではなく伊勢原を指すことになり、道灌の出生地に関しても伊勢原である推測がなりたってきます。

またこの城址には、アメリカのアラバマ州の実業家サミュエル・ウルマン(Samuel Ullman 1840〜1924)の詩「青春」(YOUTH)の詩碑があります。その中にいわく、
「(前略)Nobody grow old by merely living a number of years; people grow old only by deserting their ideals.(後略)《人は、年を重ねることのみで老いることはなく、人は、その志操を捨て去ることでのみ老いるのです≫》(尾崎孝訳)
蕨市出身の岡田義夫氏がこの詩の全文を翻訳したことにちなみ、英文と和文併記の詩碑がこの城址に建てられました。
蕨城址=埼玉県蕨市中央4-21
posted by otadoukan at 23:42| Comment(0) | 太田道灌展(紙上)
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